この映画を見て、明日も頑張りたいと思えたのは久々です。
当時の状況を考えてみるとくじけそうな気持ちになるというのに、劇中の登場人物は本当に仕事に対して誇りをもっていました。
視聴前まで
この映画は、とある理由でYahoo!ニュースでも取り上げられたことがあります。
皆さんも聞いたことあるのではないでしょうか。
「ドリーム〜私たちのアポロ計画〜」
タイトルからするとアポロ計画までの道のりを克明に描いた作品なのだなと思います。
けどタイトルと中身が余りにもかけ離れていると色々と批判が相次いで、元々の原題のままで日本にて公開にいたりました。
私は働く職人を描くドラマが好きなので、タイトルは余り気にしませんでしたけどねw
大まかなあらすじは以下のリンク先をご覧いただくと分かります。
ストーリー | 映画『ドリーム』オフィシャルサイト - 20世紀フォックス
要約すると60年代のNASAで黒人女性が働いていたこと、彼女たちは優秀な頭脳を持って仕事に打ち込んだこと、そして人種差別がまだ根強く残っていたこと。
これだけでもどんな内容なのか想像ができることでしょう。
視聴後
今までの映画はたいてい「何分経ったか」時計を気にしながら視聴していました。
この作品は時間を気にせずにずっと画面を見続けましたので、終わった後は気持ちのよい高揚感に包まれました。
そんな中、高校時代に人種隔離政策のことを学んだことを頭の中で思い出しました。
トイレが白人用と黒人用に分かれていたことを。
当時の情勢
1960年代はまだ私は生まれていません。時代背景からして戦後から15年過ぎています。
その時にソ連との冷戦が真っ只中、宇宙開発や有人飛行も例外ではありません。
当時のアメリカ大統領はジョン・F・ケネディ氏は「60年代中に人類を月に行かせる」と公約をしたくらい活気溢れた時代でもありました。
同時に、人種差別がまだまだ根強く残っているのが、本作品を通してリアルに実感できた次第です。
まだまだ白人中心主義のアメリカはNASAの職場でも当然のようにあったみたいで、東グループが白人専用、西グループが黒人専用とあからさまに分かれていました。
当然ながらトイレも別々です。
作品に出てくるキーパーソン
今回の私なりに考えたキーパーソンは、ケビン・コスナーが扮するアル・ハリソン本部長です。
NASAでは重大な部署に任されている責任者でもあります。
結論から言ってしまえば、上司の正しい決断をすることが部下の能力を最大限に引き出すと言っても過言ではないです。
数学の天才キャサリン
今の時代では人種差別はもってのほか、男女平等が当たり前になりつつありますが、それまでには先人たちの様々な運動を経て今に至っています。
当時のNASAではソ連に追いつけ追い越せの勢いで宇宙船開発に熱をいれておりましたが、いかんせん優秀な計算手がなかなか見つからなかったのです。
そんな中、白羽の矢に立ったのが黒人女性のキャサリン・G・ジョンソン
彼女の能力はずっと西グループの黒人専用の職場で働くには惜しい人材。
当時のNASAの状況を鑑みると「とにかく優秀な奴」であれば誰でも良かったのです。
作品を見ている中では、純粋に実力を評価しているのはわかりますが、上層部内では規則を盾にして白人中心主義の状況が続いていました。
キャサリンは初めて東グループの白人専用の職場で働くことになるのですが、女子トイレが白人専用にしかないためにわざわざ用を足すために黒人専用の西グループに戻ったりもしました。
東グループから西グループまで約800mの距離を歩いて。
そういった様子をアル・ハリソン本部長はキャサリンに叱責をするわけですが、彼女がなぜ西グループまでに用を足していたのか全く知らなかったのです。
これがキッカケとなって物語が一気に動いていきます。
本部長の決断
本件のトイレ問題からキャサリンは事実を本部長に伝えます。
アル・ハリソンは本当に優秀な上司ですね。
すぐに「白人専用」「黒人専用」の看板のついたトイレを壊します。
彼にとって重要なのは、優秀な人材には快適な気持ちで働いてもらいたいというのが垣間見えました。
「肌の違いで分けるのおかしい。人類みな用を足す色は同じだ。」
しびれるセリフです。
その後、キャサリンは計算手として辣腕をふるい、マーキュリー計画の一員として仕事に打ち込みます。
それでもまだまだ人種差別はあったわけですが、彼女の提案や提言等を本部長は素直に受け入れその都度決断をしていきます。
たらればになるかも知れませんが、もしアル・ハリソン以外の人が本部長だった場合、キャサリンの言い分は素直に聞いていたのでしょうか。
あらゆる要素が絡み合って、NASAの今があるわけですがキャサリンの活躍がなければマーキュリー計画はおろかアポロ計画実行までかなり時間を要していた可能性大です。
それを英断したアル・ハリソン本部長は素晴らしい上司だと思います。
無意識の差別
今でこそ、昔みたいにパワハラやセクハラは少なくなってきていますが依然として「無意識の差別」は残っていると私は考えます。
ダイバーシティを推進している企業も徐々に増えているのは喜ばしいことですが、体面だけのところもあったり雇用面で不利を出したりすることもありえます。
障害者の雇用でも本来なら健常者と同様に扱う必要があります。しかしながら明確に分けています。能力的な差がなくてもです。
たいていの職場の政治的判断のほとんどは健常者中心でやっていて障害者はむしろ雇われて感謝する風潮もあります。また健常者同士でも同一労働同一賃金であることが好ましいのに、それさえも守られていないことも挙げられます。
それって昔の人種差別と同様の扱いです。
そうなれば人種差別の時代から約50年を経っている今、人々の意識は変化はしていても本質的な意識は昔と余り変わっていないのだと思います。
本作品を見てこれからどうするか
今の時代は先人たちの偉大なる働きによって成り立っています。
これは決して忘れてはいけないことです。
彼女たちは差別に対しては大きく抵抗はしないで、みんなと協力し合いながら成功に導いています。
不平不満を言ったところでは何も解決しません。
私がいまできることは、正しく相手とコミュニケーションをすることなのではないかなと。
地道にやっていくしかないかも知れませんが、見ている人は見ていると思いますので。
最後にこの作品は自分の中で最大級の賛辞が贈れる映画です。
特に働き盛りの社会人にはオススメの映画です。
是非、視聴してみてください。
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